チヌ(黒鯛)の生態 本当の遊泳層は?
チヌの事を本当にわかってる?
チヌを釣る、そして食べる事が大好きな釣り人たち。
チヌ釣り以外でも然りですが、狙う魚種がいるなら当然狙い方を勉強するものですよね。このページはチヌに特化させていく方針ですので今回、チヌの生態についてまとめてみようと思います。
改めて思うにチヌのイメージがなんとなくあるだけで本当に正しい情報かどうかわからないものが多いですよね。そんな情報を一緒に整理していきましょう!
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チヌのプロフィール
スズキ目・タイ科に分類される魚の1種で、全長は最大70cmを超えるが、よく釣れるとされるのは30cm前後まで。
典型的な鯛の体型だが、真鯛に比べると口が前に突き出す。顎の前方には3対の犬歯があり、側面には3列以上の臼歯がある。これはヘダイ亜科の特徴。
成長によって性転換する魚。性転換する魚はメス→オスが一般的(真鯛等)だが、チヌを含めたヘダイ亜科は雄性先熟を行い、オス→メスに性転換する。2–3歳までは精巣が発達したオスだが、4–5歳になると卵巣が発達してメスになる。ただし全てがメスになるわけではなく、雌性ホルモン(エストラジオール-17β=E2)が不足したオスは性転換しない。ホルモンバランスによって大型の雄として残る場合もあるという事ですね。
雄雌の見分け方
チヌのオスメスの外的特徴は頭の形に現れる事が多いようです。
オスの頭はコブのように張り、メスの頭は張りが少なく滑らかです。
頭の形がゴツイのがオスでスマートなのはメスなんだそう。
2016年1月17日の釣行で揚がったチヌを見てみましょう。
とても滑らかなデコっぷりですね。これはメスです。では次の写真。
…わかります…?(笑)厳密に言うともうはっきり調べるのは白子か真子どっちもってるか見るしかないんでしょうけど、二枚目のチヌ写真はどっちかっていうと額が垂直気味でコブをもってるように見えませんか?
チヌのオスは頭に丸みがあってメスは滑らかでシャープな事が多いそうです。
大型は全部メス!という説は間違いであることは確実なようです。
ほかに参考動画を貼り付けておきましょう。この動画は分かりやすいです。
チヌの遊泳層
釣り師はここが一番気になるポイントではないでしょうか?お待たせしました。(笑)
一般的に言われている事で、「チヌは底を釣れ」という事で底付近を遊泳層としているイメージが強いですね。実際にのっ込みシーズンに100匹ほどのチヌを観察されている方が見た実態はというと、底付近にいるチヌは少なく、底から1m~3mほど浮き、中層を泳ぐ個体も少しいた様子。底に落ちている餌をツンツンと拾っているイメージを持っていたのですが、そうとは限らないのです。よく考えてみればそうですよね。落し込みで上から落ちてくるものに反応し、エサが底に届く前に釣れるんですからね。だからと言って全ての個体が浮くわけでもないので、「中層もあり得る」といった引き出しとして覚えておいて損はないかも?
チヌの色覚
魚は色盲であるという説もありますが、ここははっきりさせておきましょう。
チヌは色覚があります。
チヌは5つのオプシン遺伝子を持っている事が解明されており、
- Rh1オプシンは明暗感受性オプシン(明暗判断)
- LWS オプシンは赤感受性オプシン(赤色判断)
- Rh2AオプシンとRh2Bオプシンは緑感受性オプシン(緑色判断)
- SWS1オプシンは短波長感受性オプシン(紫外線を感知)
上記のとおり遺伝子レベルでの研究が進み、クロダイには明暗、赤、緑、青、そして紫外線を感知する5つのタイプのオプシン遺伝子がある事が判明しています。
また、2種類の緑色オプシンを持つことで、緑色と赤色の中間色である黄色を見分ける能力が高い可能性もあり、コーンにいい反応を示すのはこの遺伝子の影響なのかもしれません。紫外線感知能力も納得がいきます。ヒトもそうなのですが目で紫外線を感知すると身体がメラニン色素を生成し紫外線から守るため身体が黒くなります。
チヌにも個体差があるものを見た事はありませんか?色白のチヌに日焼けしたような真っ黒なチヌ…もしかしたら紫外線が届く浅場を拠点としたチヌはメラニン色素を生成して黒くなっているのかもしれません。
チヌの嗅覚
チヌは匂いに敏感で集魚剤もサナギの匂いを意識されたりと、嗅覚を期待されている一面も持っています。では実際はという、まず最初に匂いは嗅房に並んでいる嗅板を覆って繊毛が高密度で分布しています。この繊毛が匂い物質を受容するという仕組みです。
つまり嗅板が多いほど匂いを感知するセンサーが発達しているという事ですね。
いろんな魚のデータを見てみるとこんな結果が出ているようです。
- ウナギが110枚前後
- ナマズでは70枚前後
- マダイでは55枚前後
- マアジでは42枚前後
- メジナでは25枚前後
- イシダイでは24枚前後
- ヒラメでは20枚前後
- ニザダイでは18枚前後
- クロダイの嗅板数は55~60枚
(広島大学大学院准教授 海野徹也 著 クロダイの生物学とチヌの釣魚学より引用)
なんと濁りの強い視覚が効かない環境で暮らし、匂いと音で餌を探すナマズの嗅板数に匹敵する嗅覚があるようです。海水魚内では匂いに敏感であることが分かりますね。真鯛の嗅板も多く、匂いに敏感なのはタイ科の特徴なのでしょうか。
まとめ
- チヌの多くは年齢を重ねるとメスの機能が強くなりメス化する。
- チヌのオスは頭にコブができ丸く、メスはシャープで滑らかな頭。
- チヌはべた底というより、底から若干浮いた中層までにいる事が多い。
- チヌは5つのオプシン遺伝子を持ち、色をしっかり判断している。
- チヌは海水魚の中では匂いを感知する能力が高い。(グレの2倍以上)
こういった点からみて、チヌは本当にいろんな角度からアプローチができる魚種だという事がわかりますね!また魚類はアミノ酸で匂いを判断していることも分かっているため、市販のアミノ酸パウダー等を練り込む方法もあながち馬鹿に出来ないのかもしれません。チヌ釣りでスランプに陥ってる方はまだ実践していない角度からのアプローチを試してみるのもいいかもしれませんね!